こんにちは。
「ビスクドールの卵」管理人の こやぎ です。
今回は ビスクドールが大量生産出来ない理由について お話したいと思います。
ビスクドール制作を始めて早8年になります。
作家としてはまだまだひよっこですが、それでもこやぎの作品を気に入って下さる方もいらっしゃり、それはとても励みになっています。
感謝!!
ビスクドールは全ての工程が手作業のため、2つとして同じものができません。
「あれと同じもの」と言われて同じように作ったつもりでも別物になってしまいます。
腕がない、と言われればそれまでですが
「全く同じものができない」
ところが手作り、一点ものの魅力だと思っています。
同じ手作りでも、布ものやプラスチック、紙など素材的に似せて作ることが可能なものもあると思いますが、ビスクドールは焼き物です。
収縮率や絵付した色などその時の調合や窯の温度、季節などによって微妙に変わってきます。
ある程度、大きさのあるお人形なら多少似せて見えるように作れるかもしれませんが、特に小さいビスクドールは、小さいだけに数ミリが大きな違いになってきます。
ビスクドール制作を始めた当初は、ドルフェス(※)で販売されていらっしゃる方々ように、こやぎも人形を大量に作って販売しようと簡単に考えていました。
ですが、すぐに安易だったと改めました。
※ 年2回 浅草で行われているドールフェスティバル。人形作家の作品や人形用の材料が購入できます。
いづれはこのホームページにもショップとして掲載できたらなぁと構想は持っていますが(いつになることやら)
それでもオーダー形式を取ることができないのはこのような理由からです。
ではなぜ
[ビスクドールは大量生産できないのか…?]
こやぎの場合
具体的にお話します。
大量生産出来ない理由 その1 アンティーク材料を入手するのが困難
そもそも
一点物 だから価値があるんですよね。
ビスクドールに限らず、ペルシャ絨毯や家具、宝石などもそうですね。
そして、その一点物制作が私のスタンスと合致しました。
以前少しお話したことがありますが、こやぎはずっとお人形が怖いと思っていたので、まさか自分がビスクドールを作ることになろうとは思ってもいませんでした。
ですが、昔からアンティークなもの、小さくて手の 凝ったもの、キラキラしたもの(…けれど眺めるだけで何かに活用出来る訳でもないもの)が大好きでした。
幼い頃はそんなこやぎの宝物を赤い四角いバッグに収集していつも持ち歩いていました。
そしてビスクドールに出会い、自分の中で合致したんですね。
こやぎはお人形より「アンティークのステキな材料」を活かしたくて、その方法としてビスクドール制作を始めました。
小さいお人形のビスクドールは、アンティークの材料のどう活用したら良いか分からない程度の半端なハギレやレースパーツを使うのに打ってつけだったんです。
大きなお人形には足りないレースとか
素敵なんだけどシミだらけの花瓶敷きとか
ゴミなんだけど、ゴミにするはもったいないパーツたち
そんなパーツをお人形の衣装にの活かしているので小さなドール1体分の材料にするので精一杯。
と言うわけで、こやぎの制作するビスクドールは小さいサイズのものに限られます。
アンティークの材料は、値段も高いので考えどころですか、上手く活用できれば自分の腕のなささえ補ってくれます。
それが長い年月を重ねてきた重み
それがアンティークの魅力です。
古いものは汚いとか中にはそう言う方もいらっしゃるでしょう。
個人の好みもありますから一概には言えませんが、こやぎはアンティークの雰囲気が好きです。
ドルフェスなどで同じようなお人形を大量生産していらっしゃる方も中にはいらっしゃいますが、それでも厳密に言えば全く同じものはないのです。
では
ビスクドールが簡単に大量生産出来ない訳 って何でしょう?
大量生産出来ない理由 その2 簡単に始められない
ビスクドールは誰もが簡単に始められません。
ぬいぐるみや粘土素材と違い、ビスクは陶器 (焼き物) です。
やる気 だけではできないのがビスクドールなのかもしれません。
ある程度の材料を揃えられて、ある程度時間が割けて、基本制作することが好きで、飽きっぽくなくてコツコツ型で磨いたら光りそうなセンスも持ち合わせている人
というのが最低条件
「とりあえずやってみよう」ではダメな理由は、1日で出来上がるものではないからです。
最低でも1体のお人形が完成するまでに半年はかかります。
材料費もばかになりませんから、1日で「や~めた」となると揃えた材料がパアです。
実際、一日でやめる方結構います。
全ての工程をひとりでできる方には可能だと思います。
[可能な人とは]
・家に窯があり、窯の温度を調節したり焼く技術を持ち、釜に付きっきりになれる時間がある
・人形のモールド(型)を持っている
・粘土を捏ね、型に粘土を流し込み型抜きし乾かし、素焼きできる技術がある
・人形制作の工程を知っていて出来る人(磨き・目開け・絵付け)
・洋裁ができる
大抵の人が初めから全てをひとりでは出来ませんが、全ての工程をやったことがない のであれば独学はかなり難しいです。
窯を買いたくても家に設置できる場所がないとか
そもそも窯を買うお金が無いとか
同じお人形をそういくつも要らないですよね。
ひとつふたつ作るために個人で数万円のお人形の型を買うのも、技術もない。
では、どうしたら良いか?
まずはどこか最寄りのお人形教室に通って、ひと通りの知識を学びましょう。
窯は借りたり、人形の型を持っている人に抜いて貰い譲って貰った方が経済的ですし、いろんな種類のお人形を作ることが出来ます。
ドールネットワークも広がります!
そして型から抜いてもらったり、窯焼きはこちらから依頼するものですのでそんなに文句は言えません。
自分ひとりで出来ないのですから、多少不満があっても仕方ないですよね。
粘土の色とか、厚みとか(薄いと割れてしまいますからね)ある程度妥協が必要です。
そして当たり前ですが、各々で料金もかかります。
型抜き込の粘土代、送料、窯の焼成代(1体のお人形が完成するまでに大体5~6回窯に入れて焼く工程があります。その工程に人形の大きさはあまり関係ないです)
そして、必ず1回で完璧に出来る(焼きあがる)保証もありません。
陶器ですから落とせば割れますし、素焼きの時などは特にヤワなので、削ったり磨いたり、ただ水に浸けただけでも粘土の中に空気が入っていたりすると割れて破裂してしまいます。
(ちなみにこやぎがどうしても作りたくて作ったエデンべべは、顔が絵付けできる顔に焼けるまでに4回も割れました)
それだけ出来るまでにはいろいろな失敗があります。
自分で粘土も人形の型も窯も持っていれば大したことではありませんが、私を含め大概の人が持っていませんからその都度また譲って(購入)貰わなければなりません。
たまにオークションでも売っているのを見かけたりしますよね。
グリーンウェアを販売されていらっしゃる方、ソフトファイヤリング(素焼き)済みのお人形の型から抜いたものを販売されていらっしゃいます。
ここで問題です!
ひとつのお人形の型からいったい いくつの型が取れるのでしょう?
型も劣化します。
なので、せいぜい8~10個まででしょうか。
それ以上になってしまうと顔で言えば凹凸のある目鼻がのっぺりしてきてしまいキレイに型取りできなくなります。
ネットで型抜きを商売でされていらしゃる方はさまざまいらっしゃいますから いったいひとつの型からどのくらいの数、抜いているのやら…
実際こやぎも何度か利用させてもらいましたが、小さいお人形などは特に凹凸がなくなってしまってどこが目だか鼻だかわからない粘土の塊のようなものもありました。
そう言ったもろもろの理由から窯とか型とかある程度自分で所有していないとコストがかかり過ぎて商業用では作れません。
大量生産も限度があることになります。
こやぎも欲はあります。
一体1万円で売れる作家さんより 何十万、何百万で取引される大きな作家さんになりたい。
ドルフェスとかオークションとか沢山お人形が売られているのを見かけます。
こんな値段で売って良いの?って方も結構いらっしゃるのでびっくりしますが、自分のお家に窯があるのかなぁ〜って思って見ています。
こやぎが同じものを作ったらそんな値段では…赤字です。
利益度外視してとにかく作ることが好きで好きで仕方ない!とかよっぽどのお金持ちでただの趣味!と言う人もいますから、同じ種類のビスクドールでも値段が違うのはそんなさまざまな事情です。
[人形1体にいくらくらいの材料費がかかるのか]
気になりますよね。
自分で窯も人形の型も持っていなくて粘土を流して型も抜くことができない場合
人形の大きさによって金額に多少の差がありますが、人形は自分の欲しい型を持って居る人にお願いして抜いてもらう必要があります。
それが小さいものだと2500円~50センチくらいになると数万になります。
顔だけ抜いてもらってボディは既製品を利用するのでもボディも大きさや、材質によって金額が変わります。
それに人形を素焼きから絵付けまで5~6回焼いてもらう焼成代
他には人形の目(小さいものから大きいもの、またグラスアイのグレードによってもピンキリですが、やはり人形は目が命ですから良いに越したことありません)
参考までに 30センチくらいのお人形に使う目で大体7000円くらいです。
はい、目玉だけで です。
プラスチックの目玉もありますが、ビスクドールには安っぽくなりますし、すぐ黄ばんで劣化します。
その他、髪の毛 かつらが5千円~
モヘアや人毛、化繊などによってもかわります。
下着にする綿ブロードの生地 1千円~
下着用レース 2千円~(こやぎは、アンティークにこだわっているので少し高めです)
ドレス用のシルクの生地、裏地用、ドレスに使うレース、髪飾り、ピアスなど
これも作家のこだわりや使う長さによってピンキリですが、それなりに必要になります。
1つの材料代は大したことない値段でもまとまってくると結構な金額になります。
小さいお人形は髪の毛に使用するモヘアや人毛も1ロッド購入するとなかなか使いきれません。
お人形の髪の毛を一体一体変えたい、と思っても…気持ちは分かりますが実際問題
いろんな髪の色を揃えるとなるとモヘアも人毛も1ロッド3200円~くらいからしますので例えば、ブロンドの子、茶色の子、黒髪の子の3種の髪の色のお人形を作ろうとしたら髪の毛だけで1万円以上かかります。
小さいお人形は分量が少なくて良い分、購入するとなかなか使い切れません。
と、言うことで
まとめ
はじめのとっかかりは、どこか自分に合ったお教室を見つけましょう。
お教室もスパルタだったり、緩かったり色々ありますから見学したりして見つけましょう。
それで本格的にやる!って意志が固まったらそこから腕を磨いて窯など揃えていったら良いかと思います。